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それを愛と呼べるか?「彼女がその名を知らない鳥たち」ネタバレと感想


(出典元:U-NEXT)

白石和彌監督と言えば、アウトローや社会派サスペンスなど、ゴツゴツした映画を撮られるイメージがある人も多いでしょう。

そんな中で、異色とも呼べる作品が、今回ご紹介する「彼女がその名を知らない鳥たち」です。

原作は沼田まほかるさんで、「ユリゴコロ」「九月が永遠に続けば」など、ずっしりと重い作品、「イヤミス」を排出される作家としても有名です。ちなみに、「イヤミス」とは、読後感が非常に嫌な気持ちになる、後味の悪いミステリーという意味ですが、最近では女性を中心に人気のジャンルですね。

この「彼女がその名を知らない鳥たち」は、そのタイトルの意味も含めて1回見ただけではよくわからないという声も。
そこで!数々のネタバレも含めてまとめました。

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彼女がその名を知らない鳥たちのあらすじと登場人物


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

突然消えてしまった恋人・黒崎(竹野内豊)を忘れられずに自堕落な生活を送る十和子(蒼井優)は、生活を保つために好きでもなんでもない陣治(阿部サダヲ)と同居しています。

陣治は15歳年上ですが、下品で低俗な金のない男で、いつも十和子の様子を把握しておきたがります。

日々働くこともせず、何かにつけてはデパートなどに些細なことでクレームを入れる十和子。そのクレーム処理に訪れた水島(松坂桃李)に対して、どこか黒崎を彷彿とさせる何かを感じて、まるで蟻地獄のように水島との情事に溺れていきます。


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

そんな好き勝手な振る舞いをする十和子に対して、陣治はなぜか文句も言わず、突き放しもせず、ずっと十和子のそばで生きてきました。

ある時、黒崎が数年前から行方不明であることが判明、その時から十和子は、何をしても自分から離れていかない陣治は、その件に関わっているのではないかと疑い始めます。

歪んだ感情を抱いた陣治が黒崎を消し、今度は水島にも危害を加えるのではないかと怯えますが、その頃から水島の態度もそっけなくなってきていました。

塞ぎこむ十和子に対し、陣治は「また」大変なことになるから水島と別れろと懇願するのですが、そんな陣治を見て、十和子はやはり陣治は黒崎失踪のことを何か知っているのではと確信します。

事実、陣治は黒崎失踪のワケを、真相を知っていました。しかし、陣治が知っていたのは、それだけではなかったのです。

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<予告>

ネタバレあり!彼女がその名を知らない鳥たちの見どころと感想

以下、ネタバレを含みますので未視聴の方はお気をつけください!

登場人物全員クズは言いすぎか?


(出典元 (C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

原作を読んでいる人の間でも、主人公・十和子をはじめ、登場人物が酷すぎて感情移入できない!!とさえ言われたほど、この作品の登場人物はそろいもそろって酷いです。

十和子はゴミ溜めのような陣治の部屋で、片付けもせず家事もせず働かず、陣治からお金をせびっては昔の恋人とのビデオを見ながら過ごしています。そして思いついたように、些細なことでお店にクレームを入れまくる。

陣治は、十和子を好きで好きでしようがないのはわかりますが、下品(食事中に靴下を脱ぎ散らかし、差し歯をいじったり)で汚らしい男です。口癖は、「十和子のためや!」です。

十和子の恋人・黒崎にしても、お金があって素敵な男性に見えますが、とんでもない暴力男でした。デパートの社員・水島も紙きれのように薄っぺらい軽い男ですし、十和子の姉も、十和子を心配しているように見えて実は厄介者の妹を陣治に押し付けている風にも見えます。


(出典元 (C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

ただ、物語が進むにつれ、徐々に十和子の過去に何があって、陣治がそれにどう向き合ってきたのかが見えてきます。

すると、あれほどまでに汚らしく低俗に思っていた十和子や陣治に対して、いつかそれまでとは違う感情を抱くようになるから不思議なのです。

限りなく原作に忠実だからこその出来映え


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

原作がある作品を映画化すると、どうしても描写できない部分があったり、演じる俳優の違和感、そういったものが重なって、残念な仕上がりになることも少なくありません。

原作に力があるほど、その傾向は顕著です。

この「彼女がその名を知らない鳥たち」も、原作にはすさまじい暴力シーンやいろんなバージョンの性的な描写が含まれるため、それを演じ切れるのかと少々不安でした。


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

しかし、さすがは白石和彌監督、ほとんど原作に近い状態で、しかも不安要素のあった部分こそをしっかりと描いています。水島を演じる松坂桃李のえげつなさや厭らしさは完璧でした・・・・

また、これまでさわやかな役どころが多かった竹野内豊が、女性を殴る蹴るの暴力最低男を演じたのも斬新すぎでした。

彼はこの後、同じ白石和彌監督作品「孤狼の血」でも、ヤクザの役を演じていますが、こんな役もできるのかと感心する出来映えでした。

忍び寄る翳のような「謎」


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

冒頭から、十和子には「過去」があることは明かされます。リッチでイケメンの黒崎という恋人がいたこと、その黒崎と別れるとき、暴力を振るわれていたこと。

ストーリーの部分部分で、その過去の十和子と黒崎のシーンが差し込まれ、少しずつその過去が明らかになっていきます。

そして、その黒崎が、実は5年前から行方不明になっていたことを十和子は知らされるのですが、どうも陣治はそれを知っているように十和子には思えるのですね。

そういえば、無断外泊をした十和子に対し、姉が「黒崎さんと会ってたんでしょ!」と問い詰めた時、それまで黙っていた陣治が突然、「それは絶対にありません」と言っていた…


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

電車に無理矢理乗り込んだ身なりの良い若者を突き飛ばして電車からはじき出した時のあの陣治の目。

逃げる十和子に、「あんまりなことしたら、恐ろしいことが起きるで!」と言った陣治。

水島との逢瀬を尾行し、常に十和子を監視している陣治。

やはり、陣治は黒崎を殺したのではないか?そしてこのままでは、今度は水島に危害を加えるのでは…

黒崎は殺されたのでしょうか?そして、殺したのは陣治なのでしょうか?

痛々しいまでの陣治の「愛」


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

陣治はバカで、お金も力もないのに大きな事ばかり夢見る男です。

十和子にはことあるごとに暴言をはかれ、お金をせびられ、挙句、黒いくっさいドジョウや!とまで罵られます。

それでも陣治は十和子から離れようとしないのですね。

それがなぜかは、早い段階で薄々気づく人が多いはずです。行方不明になっている十和子の恋人・黒崎の件に、陣治は関わっていました。

陣治が十和子から離れないのは、黒崎の件に十和子が感づくのを恐れていたからでした。

その上で、「僕は十和子のためやったらなんでもしますから」「十和子を幸せに出来るんは、僕だけなんです」と、自ら言います。いつも頼りない陣治ですが、なぜかそれだけは、まるで確証があるかのように自信をもって言うのです。
モテない男の希望的観測、痛々しい被害妄想、そう見ることもできますが、黒崎の事件の真相が明かされた時、この陣治の言葉は嘘ではないことが誰の目にもわかります。

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完全ネタバレ注意!彼女がその名を知らない「鳥」とは?


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

タイトルにもなっている、「彼女がその名を知らない鳥たち」の意味はなんなのでしょうか?

彼女、というのは十和子のことです。それでは、その名は何を意味するのでしょう?鳥たちとは?

ラスト、陣治と対峙するシーンで、陣治が「去った」あと、たくさんの鳥が飛び立ちます。

このシーンこそが、タイトルの意味を表しているといえます。

白石和彌監督によれば、原作ではラストに飛び立つ鳥は数羽だったけれど、彼女=十和子、その名を知らない鳥たち=陣治の愛であるならば、それは数羽どころでは済まないな、そう感じたことで、無数の数えきれない鳥たちにしたのだそうです。


(出典元 (C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

十和子は、陣治に守られ生きてきたのですね。陣治が十和子を監視していたのは、自分の罪が明るみになるのを恐れたのではなく、十和子が「自分(十和子)のしたことを思い出す」のを危惧していたからでした。

壊れた十和子の後始末をし、そこで十和子が自分のしたことを覚えていないことに気がつき、陣治は心の底から「良かった!」と思うのですね。

そして、嫌がられようが何をされようが、十和子のそばに居続け十和子を守ってきたのでした。

陣治は、金もなければ決して男前でもない、どうしようもない男です。

その陣治が、唯一出来ることが、十和子を全身全霊で命を賭けてでも守ることでした。そしてそれは、世界中でただひとり、陣治にしか出来ないことでもあったわけです。

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この映画は2度見てほしい、その理由とは?


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

この作品は、1度のみならず2度見る人が少なくありません。それには実は理由があって、1回最後まで見て真相を知った上でもう一度見ると、この痛々しいまでの「愛」を、陣治の気持ちが胸に突き刺さってくるからです。

黒崎のことを問い詰める十和子に対し、陣治は「俺が埋めた、今ごろ骨になっとるわ」と言います。それに対して、十和子は「なんでそんな余計なことしたん?!あんたが死ねばよかったんや!」と泣き叫びます。

しかし陣治は、自分が黒崎を殺したことを十和子が怒り狂うのを見て、なぜか安堵したような態度を見せます。

そして、まるでお祝いでもするかのように、冷凍しておいたとっておきの肉を焼いたり、ペットを飼う話をしたりします。


(出典元:(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会)

初見の時は、この二人のやりとりを見て誰もが「陣治は自分の罪を告白して楽になったんだ」と思います。十和子から罵倒されても、仕方ないと。

しかし、結末を知った上でもう一度見直した時、1度目とは全く違う印象になるはずです。それまでの陣治のセリフの本当の意味、罵倒されながらも何も言い返さない陣治、死ねばよかったんやと言われた陣治、自分のことなどこれっぽっちも好きじゃない十和子のことを死ぬほど好きな陣治を思うと、このどうしようもないクズな男が哀れで愛おしくてたまらない、そんな気持ちにさせられます。

盛大に間違ってはいるけれど、陣治のそれは間違いなく「愛」だったと気づかされます。

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この作品は、決してお涙頂戴の感動モノではありません。原作を読んだ人の感想も、「泣けた」という感想はあまり聞かれなかったように思います。

しかし、映画を見た人のレビューなどをみると、「泣けてしようがなかった」という声は多く、何度も見てしまったという人も少なくありませんでした。

それはひとえに、原作に忠実に映画を作り上げた白石和彌監督の思いと、蒼井優、阿部サダヲという素晴らしい俳優の力量の賜物であると言えるでしょう。

脇を固めた竹野内豊、松坂桃李のそれはそれは最低なゲス野郎っぷりも見ごたえ十分です。

原作を読んでちっとも感情移入できない!共感など出来ない!と思われた方も、どうか見てほしいです。

不快感だらけ、泣ける要素はないように見えるこの映画を、この、ド底辺でもがきながらも自分だけの、自分にしかできない愛し方でそれを全うした陣治の愛の物語を、見ていただきたいと思います!

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