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【感想・ネタバレ】出産の光と闇を描く「透明なゆりかご」


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

医療を題材とした作品は大変多いですが、その中でも産婦人科に焦点を当てたコミック作品はぐっと少なくなります。

有名なところですと、ドラマ化もされた「コウノドリ」、古いものですと「おたんこナース」「こちら椿産婦人科」などがありますね。

今回ご紹介するのは、コミック配信で常に上位にランキングされ続けている作品「透明なゆりかご」です。

作者の沖田×華(おきた・ばっか)さんによる、自身の看護経験をもとにした作品で、柔らかく親しみのある画風でも知られています。

ネタバレと感想などをまとめました。

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透明なゆりかごってどんなストーリー?


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

この作品は、作者が1997年当時の法律、医療に基づいて構成されており、現在とはいくつかシステムなどが違っている部分があります。

看護師も、看護婦と呼ばれていた時代で、今では問題の温床にもなっている「お礼奉公(無資格者が病院に勤務しながら援助のもとで学校へ通い、卒業後はその病院で勤務するシステム)」といった独特の慣習なども当たり前だったころの話です。

街の産婦人科へ見習いとしてアルバイトに来た×華の視点から、喜びばかりではない妊娠・出産の現実、家族の在り方、女性の生き方などが描かれています。

透明なゆりかごの登場人物

沖田×華(作者であり、作品の主人公)


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

高校の3年生の夏休みにアルバイトをするため、街の産婦人科で勤務します。見習いでしたが、勤務してすぐに受け持った仕事は、「アウス(人工中絶)された胎児の処理」でした。

おめでとうと言われることのないその胎児たちの処理をしながら、×華は太陽や外の景色を見せ、心の中でお別れを言うことを日課にしています。

院長先生


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

画風から察するに、日に灼けたちょい悪系。子だくさんで奥さんにキレられることも。

順調に出産にこぎつけた妊婦が予想外の症状で死亡するという事態に見舞われます。

ドライなようで、熱血漢なところもある先生。

同僚ナースたち


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

師長さんはじめ、先輩ナースが複数登場します。見習いの×華は、先輩ナースたちに様々なことを教わり、自身の思い込みや、母親の姿への決めつけなどを考え直すようになります。

クリニックを訪ねてくる女性とその家族、関係者たち


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

この作品には、通常に幸せな妊娠、出産を迎えた人ばかりが登場するわけではありません。むしろ、そうでない女性たちが多く登場します。

自力出産した女子高生、一度も検診を受けずに飛び込みで出産した野良妊婦、男性に依存することでしか生きるすべを知らない女性、義理の父親に性的虐待を受け続けてきた幼い少女などなど、目を背けたくなるような体験をしてしまった女性も登場します。

彼女とその周囲の人々の決断や洗濯を、×華の視点を通して描かれています。

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透明なゆりかごのエピソードあれこれ

基本的に1~3話で完結する形でエピソードが進みます。
その中から、心打たれるエピソードをいくつかご紹介しましょう。

小さな手帳(第1巻)


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

ある時、×華の小学時代の同級生、ミカが出産のためにやってきます。幼いころ、発達障害のせいで周囲となかなかなじめなかった×華にとって、母親から虐待されていたミカが唯一心許せる相手でしたが、ある日突然ミカは転校してしまい、それ以来の再会でした。

ミカは、母親から虐待され児童養護施設で育ったのですが、母子手帳を心のよりどころにして生きてきました。たとえ虐待をする母親でも、たった一人の母親ですから、生まれる前のミカを愛おしく感じている母親こそが、本当の母親であると信じることで生き抜いてこられたのです。

母親も、一度はミカから母子手帳を取り上げ、「捨てる」と言いましたが、亡くなるまで捨てていなかったことがわかります。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

ミカは無事出産し、笑顔で退院していきます。「母を許せないけど、全部は嫌いになれない」と。

×華も母親との関係がうまくいっていない過去があったため、同じように自分の母子手帳を探してみます。そこに書いてある母親の感情に、同じく涙する×華でした。

産科危機(第1巻)


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

双子を妊娠していた浜田さん。出産時に突然の大出血に見舞われ、懸命の救命処置にも関わらず亡くなってしまいました。浜田さんの夫は、妻が亡くなった現実を受け入れられず、裁判を起こすと病院に怒鳴り込みます。

×華の勤務するその産婦人科医院では初の死亡事故となり、看護師たちは原因究明と再発防止に努めていましたが、その後裁判は起こさないと浜田家から伝えられます。

しばらくたったある日、×華は偶然にドラッグストアで浜田さんの夫と遭遇します。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

身分を明かしたうえで、話しかけた×華に対し、浜田さんの夫はぽつぽつと心境を語り始めました。

双子を男で一つで育てるのは厳しいと考え、親戚に養子に出そうとも思ったけれど、それもうまくいかず、夫は自殺しようと考えるようになったと言います。

しかし、子どもたちが自分をまっすぐに見つめるのを実感し、この子の親は自分だけだと思いなおしてしっかりと生きていくことを決めたと話してくれたのです。

病院に戻った×華は、「存在しているだけで誰かを元気にさせることのできる赤ちゃんの存在」を再認識するのでした。

7日間の命


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

1人目をおなかの中で亡くしてしまった坂本さん夫妻。二人目の出産を控えたある日、その赤ちゃんの心臓に重度の奇形があることが判明します。出産後手術をしたとしても、延命程度にしかならないほどの重症で、無治療の場合は生まれてこられたとしても7日ほどしか生きられないと告げられます。

悩みぬいた坂本さん夫妻は、一度は人工死産の決意をします(病院としても基本的に母体優先)。
しかし、坂本さんのご主人は、「たとえ短い間でも、この子と過ごしたい、会いたい」と言い、夫妻は無治療の上の出産を選択します。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

生まれた女の子は「愛美」と名付けられ、家族で濃密な時を過ごしますが、5日を過ぎてからは容体が悪くなっていき、1週間目に亡くなりました。

それでも、坂本夫妻にとってはかけがえのない娘との貴重な素晴らしい日々であり、命はたとえ短くても輝けるとあらためて×華は思うのでした。

師長さんについて(第3巻)


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

×華が勤務するクリニックの師長さんは、勤続35年のベテラン。そんな穏やかで思慮深く、仕事も完璧な師長さんも、新人ナースの時代に忘れられない経験があったと言います。

健全に出産を迎えた妊婦が、出産時に赤ちゃんの腕が先に出てしまうという事態に見舞われます。これは「横位」という胎児の姿勢が原因で、現在では事前にエコーなどで容易に判別できるため、あらかじめ帝王切開での出産になりますが、師長さんの新人時代ではそこまでわからないことも多く、稀に出産時に初めてわかるといったこともあったのだそうです。

その場合、すでに産道から腕が出るなどしている場合、出産は不可能となり、母体を優先させるため赤ちゃんを死なせざるを得ないこともあったとか(現在の医療現場ではまずありませんが、それでも横位での赤ちゃんの自然分娩死亡率は50%)。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

その際に取り乱した師長さんは、何も知らされていない妊婦さんに泣き顔を見せてしまいます。心の準備もないままに事実を悟った母親は錯乱し、大変な問題となってしまいました。

この時師長さんは、先輩ナースから叱責されますが、まるで心がないかのようにてきぱき行動する先輩ナースをどこか軽蔑してみていました。

しかし、数日後別の死産に遭遇した際、ただひたすら母親に寄り添い、肩を抱いて話を聞いている先輩ナースを見、仲良くすることとプロとして接することの違いをはっきりと感じることになったのです。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

産科に勤務するナースにとって、大切なことは母親や父親の気持ちに寄り添うこと、たとえ悲しい結果の赤ちゃんでも、生きている赤ちゃんと何ら変わりはないという気持ちであることで、悲しみを分かち合うことではないと師長さんは×華に教えます。

そんな悲しいことも全て受け止めて仕事をしていくこの職業を、×華はあらためて誇りに思うのでした。

保育器の中の子


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

ある朝、クリニックの玄関先に紙袋が置かれていました。その中にはなんと生まれたばかりの赤ちゃんが…!

保育器に入れられた名もない赤ちゃんは、非常におとなしいうえにかわいらしかったため、ナースたちに「しずちゃん」と名付けられます。×華にとっても、他の赤ちゃんには持ち合わせなかった感情が芽生え、献身的に世話をします。

少しずつ体調も回復し、体重も増えてきたころ、女子高生とその家族がクリニックを訪れます。聞けば、体調が悪い娘を病院に連れていくと、なんと出産した形跡があると告げられ、慌てた両親が問い詰め、娘が自力で出産したのち、クリニックに置き去りにしたことを知ったのでした。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

しずちゃんと対面した母親である女子高生は、頑なに拒否し、絶対に育てないとわめきます。それに怒る両親をなだめ、師長さんは静かに女子高生に聞きます。
「あなた、捨てるところは他にもあったでしょうに、なぜここ(クリニック)に捨てたの?」
しずちゃんは体重が増えたら、女子高生の両親の引き渡されることが決まります。しかし、×華は納得できずにいました。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd)

しずちゃんが引き取られてからも、虐待されていやしないかと気が気ではなく、ある休みの日、住所を頼りに自転車で女子高生の家に行きます。

隣町のその家は案外遠く、出産後すぐに自転車でこの距離を移動するのは大変だったろうな、と何気なく思った×華は、師長さんのあの問いかけを思い出します。

「なぜこんな遠いところまで捨てに来たのか」

どんなにひどいことをした母親でも、無意識に子供を助けたい、という意識が働いたのではないか。それに気づいた時、×華はあふれる涙を抑えられませんでした。

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透明なゆりかごの感想


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

画風が独特で、一見ギャグマンガ的なものであるため、内容を読み進めるにつれその重さに驚く方もいるかもしれません。

また、設定が20年前の話であるため、今とは異なる内容が見受けられるため、経験のない方や若い医療従事者には現実味がないと感じる人もいるかもしれませんね。

しかし、その内容としては、他の作品のどれよりも「リアル」だと感じました。妊娠や出産、不妊治療や中絶のいずれかを経験されている方にはどのエピソードも身近に感じられたのではないでしょうか。

私ごとになりますが、死産という悲しい出来事を経験しているため、先に紹介した「7日間の命」は自分の上京と重なって、しかもそのセリフのどれもが自分のその当時の感情と同じで、×華さんがどれほど深く家族に寄り添ってきたのかがとてもよくわかりました。そうでなければ、この心情はわかりようがないからです。

それぞれのエピソードも、決してハッピーな終わり方ではない場合が多いのですが、その中でも一筋の光が見えるような終わり方になっていて、読後感が悪いといったことはありません。悲しい、切ない!というのはありますけれども。


(出典元:沖田×華 ©2008-2018 Kodansha Ltd.)

中絶問題にしても、決して若い世代の「過ち」だけではなく、既婚者でも有り得る現実、子どもを愛せない母親の存在、彼女たちに寄り添う医療関係者の気持ち、いろいろな視点、いろいろな立場が非常にシンプルではあるけれども力のある言葉で描かれており、人気の理由がよくわかる作品であると思います。

何度も描かれる、×華がひとり中絶後の胎児を葬るシーン(ケースに入れて業者に手渡すだけですが)は、一見グロテスクで悲しい場面ではありますが、なぜか温かみも感じられ、この作品では欠かせないシーンとなっています。

透明なゆりかごまとめ

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透明なゆりかごは、2018年夏にはNHKでドラマ化も予定されており、撮影が進んでいます。

そういったことからも、多くの世代、男女問わず人気があるということがわかりますね。

内容が内容だけに、抵抗がある方もいると思いますが、これから親になるかもしれない若い世代の人、孫が生まれる人、悲しい過去を精算出来ずに悩んでいる人など、これは多くの方に手に取っていただきたい作品です。

おめでとうと言われるだけではない、産婦人科の悲しい一面があるということ、たくさんの涙があることも、合わせて知ってもらえるといいなと思います。

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