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【動画・あらすじ感想】ドーン・オブ・ザ・デッドに見る世界の終わり


(出典元:dTV)

ゾンビと言えば、墓場から生き返った死人、という設定で、火葬メインの日本では現実味が薄く、いわゆるB級ホラーとして見る人が多いでしょう。

しかし、近年のゾンビ映画は、その設定も近代化しており、すべてが墓場から生き返るわけではなく、感染、突然変異といった設定が多くなりました。したがって、火葬される前にゾンビ化してしまうため、日本も他人ごとではなくなっています(?)。

しかも!ゾンビと言えば両手を前に突き出し、うめき声をあげながらヨタヨタと迫ってくるはずが、最近のゾンビはなんと全速力で襲い掛かってくるほどの凶暴性を持っています。

そのゾンビ映画の中でも、非常に評価の高い一本をご紹介します。ジョージ・A・ロメロ監督原作による「ドーン・オブ・ザ・デッド」です。

ただのお笑いパニックホラーではないゾンビ映画の数少ない成功例としても有名なこの作品、完全ネタバレでまとめました。

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<予告>

ドーン・オブ・ザ・デッドのあらすじネタバレ


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

アメリカ・ウィスコンシン州で暮らす看護師のアナ(サラ・ポーリー)は、夫のルイスとごく平凡な日々を過ごしていました。郊外に家もあり、ご近所とも友好。近所に住む少女、ヴィヴィアン(ハンナ・ロックナー)もアナに懐いています。

ケガ人がやけに多く運ばれたある日、時間外勤務をこなし帰宅し眠っていたアナとルイスは、ふと気配を感じて目を覚まします。寝室のドアのところには、なぜかヴィヴィアンがじっと立っています。ルイスは、ヴィヴィアンが怪我をしていることに気づき駆け寄ります。その瞬間、ヴィヴィアンがルイスに襲い掛かったのでした。

アナは重傷を負ったルイスを介抱しながら必死で911に電話をしますが、なぜかつながりません。すると、一度は脈が途絶えたはずのルイスが起き上がり、困惑するアナに襲い掛かってきたのです。


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

とっさに車のキーをつかんでバスルームに逃げ込んだアナは、何が何だかまったくわからないまま、バスルームの小窓から外へ脱出します。

しかし、外の世界は昨日までとは全く違い、あちこちで火の手が上がり、隣人たちは殺し合い、そこら中に死体が転がっていました。

隣人たちの変わり果てた姿を見ながら、アナは車をひたすら走らせます。

実は、アナが病院で勤務していたころから、アメリカのあちこちで原因不明の暴動が起き、けがをした人が同じように狂暴になるという事案が発生しており、それはものすごい速さで全土に拡大していたのでした。

アナは道中知り合った生存者たちと協力して、なんとか事態を打開しようと試みますが・・・

ドーン・オブ・ザ・デッドの見どころ感想

では、ドーン・オブ・ザ・デッドの見どころについて、オリジナル版、その他のゾンビ映画などと比較しながらご紹介します。

走るゾンビの功罪


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

この映画は、1978年に作成されたジョージ・A・ロメロ監督の出世作、「ゾンビ(原題: Dawn of the Dead)」のリメイクです。

大まかな舞台設定やたてこもり場所、ストーリーの運ばれ方などは原作を意識していますが、全く違う面もいくつかあります。

その中で大きく違っているのが、「ゾンビが全速力で走る」という点です。この設定は、原作のロメロ監督はお嫌いだそうですが、走るゾンビを起用したことで映画自体が非常に動きがあり、その結果多くのエピソードも描けています。

ただ、テンポがいい半面、オリジナルというかロメロ監督製作のゾンビ映画全般に漂う空虚感、乾いた世界観、そしてじんわりと、静かに訪れる世界の終わりといったものはかなり薄くなっていますね。この辺りをどう解釈するかで、リメイク成功か、失敗かの判断になるのだと思います。

細かいキャラ設定と人間模様


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

ホラー映画ではキャラ設定が雑であることが多いです。よって、見ていると「あーこの人すぐ死ぬな」とか、「この人は生き残るな」と安易にわかってしまうことも。

また、嫌な奴は最初から最後まで嫌な奴だったり、お色気要員のすぐ死ぬお姉さんとか、わかりやすい設定の作品が多いですね。

「ドーン・オブ・ザ・デッド」では、映画にしては多くの人物が登場します。その誰もがエピソードを持ち、かなり作りこまれた設定となっていて、それぞれの心情が交錯する人間模様も見どころのひとつです。

ゾンビの襲来に対抗しつつも、逃げ込んだモールの内外で繰り広げられる出来事は、随所にロメロ監督のそれまでの作品を彷彿とさせるつくりにもなっています。


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

たとえば、モールの向かいにある銃器店で生き残っていた店主・アンディとの交流の中で、屋上から「嫌いな有名人」に似たゾンビを撃ち殺す「遊び」をするシーンがありますが、これは人が人であったものに対して無感情になっていくことへの皮肉ととらえられます。

恋人と生まれてくる命を守りたい人、職務上助けを求める人に背を向けられない人、家族を最後まで守ろうとした人、それぞれの思いがしっかりと描かれ、単なるサバイバル・ホラーを超えたものに仕上がっています。

ショッピングモールに隠された深い理由


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

ゾンビたちはわらわらとショッピングモールへ集まりたがりますが、これはそこに人が隠れているからでもあるし、人間だった頃の習慣を忘れていないからです。逃げ込んだ場所がショッピングモールである点は、映画「ゾンビ」でロメロ監督が痛烈に皮肉った「過剰消費社会」を同じ手法で表しています。

理性が吹き飛んだ後も彼らは、生前の生活習慣を忘れていない、という設定はロメロ監督の生み出したものですね。

私たちは意味もなく、目的もなくショッピングモールをうろつくことがありますよね。ただなんとなく、なにをするわけでもないけれど、ショッピングモールに日々通うのが習慣というか、そこに行けばなぜかホッとするという人もいます。


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

これは、何もショッピングモールに限ったことではなく、たとえば人と同じこと、大多数の意見に埋もれていないと安心できない人や、自分で考えて行動することが苦手な現代の人たちを皮肉っているとも言えます。

ふらふらとあてもなく、ただ惰性で動いている・・・みんなが行く方へ流れていく、そこに自分の意思や主張がなくても。
ロメロ作品で描かれるゾンビたちは、実は私たちの姿そのものなのですね。

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冒頭5分のすばらしさ


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

あらすじにもある通り、冒頭は穏やかないつもの日常が描かれています。

時間外の勤務を終えへとへとで家路につくアナ。近所の子供とのいつもの会話、夫との甘い時間。なにも、いつもと変わりません。

しかし、実はその時すでに事態は進行しています。車の中で途切れたラジオニュース、シャワーを浴びていた時に見逃した臨時ニュース、そしてなにより、アナの勤める病院にはすでに多くの被害者が運び込まれてきていたのですね。


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

この、じわじわと日常を侵食していくじっとり感は、非常にうまい演出であったと言えます。

日常は、ふとしたことの重なりで壊れますし、きっと世界の終りも、こんな風に静かに知らぬ間に、私たちのすぐそばにやってくるのでしょうね…

人はいつまで人でいられるか


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

映画の中では、生存者たちが生きる道を模索します。逃げてきた時点では「人間」であっても、感染してしまっていればいずれゾンビへと姿を変えてしまいます。

少女と父親のケースでは、いずれゾンビになってしまうからという理由で、感染した父親を殺そうと話し合われますが、娘・ニコールの気持ちを考え、結局父親の死を見届け、ゾンビになった瞬間に殺害することになります。

死の間際、父親は「最期の時まで人生は愛おしい」とつぶやきますが、この出来事の後、生存者たちはそれまでと違った行動をとり始めます。逃げ惑い、嘆くのをやめ、モールでのたてこもり生活を楽しみ始めたのです。

それはそれでいいのですが、ヒマつぶしにゾンビたちを的に射撃を始めたりもします。

自衛のために戦い、相手を倒すことはいたしかたないにしても、遊びとしてそれをするのは人としての超えてはいけない一線だったように思います。もちろん、これらもすべて人間の傲慢さを皮肉ったものなのです。


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

一方で、臨月の妻と逃げていた黒人青年・アンドレ(メキー・ファイファー)は、妻が感染していることを知りながら、それでも妻を守ろうとします。

妻の出産を見届け、さらにはゾンビ化した妻を撃ち殺した仲間を、アンドレ自身が射殺します。彼は、最期まで家族を守ろうとしたのですね。(ちなみにこのアンドレ役の俳優は、「ER緊急救命室」でおなじみ、プラット先生です!)


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

警備員のリーダー・CJも最期まで仲間を守ろうとした人でした。当初は権力を握ろうとして威圧的な態度でしたが、部下の死を目の当たりにしたあたりから彼の中で何かが変わり、悪態をつきながらも協力していきます。

そして、仲間の最大のピンチに、自身を犠牲にすることで仲間を守り通しました。彼自身も、最期まで人として生きられたのです。


(出典元:© 2004 Universal Studios.)

番外編として、迷い犬チップスとあわや心中する羽目になりかけたニコールもそうです。父を亡くし、迷い犬チップスを心のよりどころにし、それゆえ周囲の人をも巻き込んだトラブルを起こしますが、犬を救うためにとった行動は、きっと彼女が人でいるための手段だったのでしょう。チップスはちなみに無事でした。

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(出典元:© 2004 Universal Studios.)

ゾンビを扱った作品は、最近では世界的な大ヒットとなった「ザ・ウォーキング・デッド」があります。この作品も、単なるサバイバル物にとどまらず、人の愚かさや恐ろしさ、愛おしさをこれでもかと詰め込んだ名作ですね。

それらも含めたすべては、間違いなくジョージ・A・ロメロ監督が作り上げたものです。

その彼も、2017年にお亡くなりになりました。しかし、今後も彼の作り上げた偉大な「ゾンビ文化」は、時代を超えて必ず受け継がれていくでしょう。

「ドーン・オブ・ザ・デッド」の原作である「ゾンビ」の他にも、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「死霊のえじき」がいわゆるロメロ監督のゾンビ3部作と言われていますので、生涯に一度はご覧になっていただきたいです。

現在、dTV、Netflix他で配信中です。DVD版には、この事件当日の報道を描いたもの、銃器店のアンディが遺したビデオテープが特典映像としておさめられています。機会があれば是非そちらもお楽しみくださいね。

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