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【あらすじ・ネタバレ】「きみはいい子」誰だって、いい子。


(出典元:U-NEXT)

中脇初枝さん原作の「きみはいい子」。

本屋大賞に選ばれたほか、書店の勤める方々によって応援団まで結成されたというほどの名作が、2015年に呉美穂監督によって映画化されました。

呉美穂監督といえば「そこのみにて光輝く」など非常に深い作品を撮ることで有名ですが、この「きみはいい子」はどのような作品なのでしょうか。

小説を読んでいる方も、読んでいない方にもネタバレ・あらすじを含め、感想をまとめます。

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きみはいい子の原作とテーマ


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

原作、映画ともにテーマとなっているのは、いわゆるいくつもの社会問題です。

原作自体は、2010年に大阪で起こった幼い姉妹がマンションに置き去りにされ死亡した事件がきっかけですが、内容は児童虐待にとどまらず、学級崩壊、いじめ、独居老人、障害のある子ども、モンスターペアレンツなど、昨今社会問題として取り上げられている事柄をいくつかのストーリーとしてまとめてあります。

原作では、5つの独立したストーリーとして描かれていますが、映画ではその中から3つのストーリーを取り上げ、登場人物をうまくリンクさせてあります。

こうすることで、それぞれのテーマがおおきな一つの作品として仕上がっています。

原作の舞台は、富士山の見えるとある新興住宅地、という設定ですが、映画は北海道・小樽市の、ありふれた風景の中で撮影されています。この、舞台選びも、ビジュアルとしてこの映画を際立たせた要因のひとつです。

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<予告動画>

君はいい子のあらすじと登場人物


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

桜が丘小学校に勤務する岡野(高良健吾)は、4年生の担任。彼が受け持つクラスは問題を抱えており、優柔不断で物事から逃げがちな岡野は対処しきれないまま。

クラス内では女子児童のいじめや、児童による地域の人への迷惑行為、食事を満足に摂らせてもらっていない疑いのある児童、教師をなめてかかる児童の存在など、すでに学級崩壊寸前でした。

同じ桜ケ丘小には、障害を持つ子供のクラスもあり、日々騒がしくも楽しそうに子どもたちと接している大宮先生(高橋和也)に対しては教師として学ぶべき部分が多いと感じています。


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

その大宮先生が特に目をかけているのが、自閉症児の弘也。スーパーに勤務する母親(富田靖子)と暮らす弘也は、通学路の途中にある家に1人で暮らす老女・あきこ(喜多道枝)に「こんにちは、さようなら」といつも挨拶をするのが日課。

あきこはこの頃物忘れがひどくなり、ある日会計をしないままスーパーを出てしまい、万引きしたと咎められてしまいます。


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

マンション住まいの雅美(尾野真千子)は、娘のあやねと単身赴任中の夫の3人暮らし。

似たような環境のママ友たちと、子連れで近所のパンダ公園に行くのが日課。

どこか上っ面だけのママ友の中で、いつも笑っている陽子(池脇千鶴)のことはなんとなく苦手で、陽子が子供たちにむける優しさもどこか嘘くさいと感じています。

雅美は実親との関係から、「自分は世界で一番悪い子だ」と信じて育ち、愛されたことがないために愛し方を知らずにいました。その結果、娘に対しても自分がされたことしか出来ず、それは虐待の連鎖を生んでいました。

ある時、陽子の自宅に招かれ、娘がカップを割ってしまいます。咄嗟に叩かれまいと頭をかばう娘をみて、「虐待しているのがばれた!?」と思った雅美に対し、陽子がとった行動が意外なものでした。

学級崩壊のクラスを受け持つ岡野は、家族に相談してみます。そこで、家族からの助言をもとに、子どもたちにある「宿題」を出すことにします。

<予告2>

ネタバレ注意!3つのストーリーと見どころ


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

この作品は、原作の中の「べっぴんさん」「こんにちは、さようなら」「サンタさんの来ない家」を中心に、それぞれの登場人物をリンクさせた形式で作り上げられています。

映画では詳しく描かれていない部分もありますので、テーマと共にそのあたりも掘り下げて見ていきます。

「サンタの来ない家」~児童虐待、学級崩壊、モンスターペアレンツ、いじめ~


(出典元 ©2015「きみはいい子」製作委員会)

岡野先生はまだ若いということを差し引いても、「事なかれ主義」です。

授業中にお漏らしをしてしまった児童の親から「トイレに行けなかったのは先生が恐いからだ」とクレームを入れられ、うまく対処できなかったうえにその事なかれ主義を発揮して、授業中に無条件にトイレに行くことを許可してしまいます。

その結果、子どもたちは面白がって勝手にトイレに行きはじめ、お漏らしをした子どもはいたたまれない立場になり、なに一つ解決するどころか悪化させてしまったのです。

一方、給食費未払いの神田さんという児童に対しても、気にはなりながらも一歩を踏み込めずにいました。というより、踏み込むべきではない、踏み込むのが恐いと、いわば「見て見ぬふり」をしていたのですね。


(出典元 ©2015「きみはいい子」製作委員会)

八方ふさがりの岡野先生でしたが、実家で甥っ子に抱きしめられたことで、何かが変わります。

そして、翌日子どもたちに、「家族に抱きしめてもらう」という宿題を出すのです。自分がされてうれしいことは、自然と他人にもするようになる。そのことを実感してほしかったのですね。

子どもたちは文句を言いながらもその宿題をやってきます。そして、どんな気持ちになったかを発表しあうのですが、崩壊していたはずのクラスは静かに人の話を聞き、自分の意見を言う健全な姿に戻っていました。

どんな上からの言葉よりも、体験こそが人を作る、そしてこのことを通して、岡野先生は踏み出せなかった一歩を踏み出すことになるのです。

「べっぴんさん」~ママ友、虐待の連鎖、親子関係~


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

雅美は娘を虐待することを止められません。けれどそれは絶対に誰にも知られてはなりません。

自分だけがどうしてこうなんだと思う反面、表面上にこやかなママ友が時折見せる感情的な面を盗み見て安堵する雅美。そう、虐待するのは「私だけじゃない」と。

しかし、他人のそれと自分のそれには本当は超えられない壁があることを認められません。同じ母親である陽子はそれに引き換え、子どもに感情的にならずにおおらかな態度を見せます。雅美と陽子の差はなんでしょう?

雅美は虐待されて育っていますから、子どもにそうするのも仕方ないのでしょうか?

では、虐待された子供は皆、虐待する親になるのでしょうか?

実は、陽子も虐待されて育った子供でした。そして、雅美とあやねの親子関係を見て、早い段階から雅美が虐待していること、そして、雅美自身も虐待されて育った子供だったと見抜いていたのでした。

雅美と陽子の違いは何だったのでしょう。それは、誰でもいいから自分のことを見守ってくれた人がいたかどうかの違いです。


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

陽子には、いつも陽子を「べっぴんさん」と呼んで見守ってくれた、在日朝鮮人のおばあさんの存在がありました。

そのおかげで、人を見守り、愛することを学ぶことが出来たのです。これは原作者、中脇さんの実体験に基づくものでもあり、地域が子供に与える影響の深さも表しているのです。

虐待された人は虐待する人になるのではなく、虐待されている人の気持ちに寄り添える、誰よりも力になり得るということこそが、実は大切なことなのです。

ちなみに、岡野先生の同僚で、弘也の担任である大宮先生は、この陽子の夫です。

「こんにちは、さようなら」~母子家庭、障害児、独居老人~


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

スーパーで万引きと咎められたあきこは、顔見知りの小学生・弘也がカギをなくしてパニックになっているのをみつけて家に招き入れます。

連絡先が明記してあったため、母親に連絡しますが、現れたのはあきこの万引きを咎めた店員でした。

平謝りする母親に対し、あきこは弘也のことを「こんなにいい子はいないと思うわ」と褒めるのですね。

迷惑をかけたとばかり思っていた母親は、その言葉に涙を抑えきれません。あきこはそっとその肩を抱いて、母親の思いを静かに聞くのでした。


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

個人的にはこのストーリーが一番好きです。とりたてて大きな展開のある話ではないのですが、人は何気ないふれあいでここまで人の重荷を軽くすることが出来る、やさしさはやさしさを連れてくるんだなぁと思えるのです。

もしもあきこが、弘也の母親があのスーパーの店員と知って、そっけない態度をとったらどうだったでしょう?逆に、母親があきこを見て傲慢な態度をとったらどうだったでしょう?

見ず知らずの人同士、言葉も少なく行き違ったならば、弘也の母親の心は疲れ切ったままだったでしょう。あきこもまた、寂しい生活から抜け出せずにいたでしょう。

余談ですが、自閉症児・弘也の役を演じた加部亜門くんにも注目が集まったようです。おおげさでなく、良い意味で特徴をつかんだリアルな演技でした。

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ラストが意味する作品の本質


(出典元 ©2015「きみはいい子」製作委員会)

この映画のラストは、ぷつりと途切れて終わります。

ラストに取り上げられるのは、岡野先生と神田さんの話。例の宿題を出した後から、神田さんは学校に来ていませんでした。

岡野先生は、気になりながらもなにか胸につっかえているものが何かわからずにいます。

そして、神田さんがいつも17時まで家に帰ってくるなと言われていたことを思い出すのですが、そこで岡野先生は自分が大きな勘違いをしていたことに気づきます。

そう、岡野先生は神田さんは家に帰りたくない(虐待されるから)んだと思い込んでいたのですが、実は神田さんは、早く家に帰りたくて17時になるのを待っていたのです。

17時に帰ってこいと言われたのではないのです、17時まで帰ってくるなと言われているのに、ひたすら時計を見ながら17時を待っている神田さん。

彼は家に帰りたくないのではなく、家に帰りたかったんですよね。


(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

そこに気づいた岡野先生は、猛ダッシュで神田さんの自宅へ行き、ドアを叩くところで映画は終わります。

この先は、観る者に委ねられたということでしょうか、もしくは、人それぞれの結末があっていい、そういうことかな、と感じます。

しかし、大事なのはラストの答えと言うより、岡野先生の行動にあるのではないかと思います。

神田さんの家について、ノックをするものの応答はありません。しかし岡野先生は、そこで帰らず、息を整え、意を決したようにもう一度強く扉をノックするのです。この、2回目のノックこそが、踏み出した一歩といえるのではないでしょうか。

今までさんざん逃げてきた自分が、大きな第一歩を踏み出そうとしているわけです。

どうなるかなんてわからない、神田さんを悲しませるかもしれないし、トラブルになるかもしれない、でも、踏み出さずにいられなかった岡野先生の成長を、見る人間が自分のこととしてとらえるということに本質があると思っています。

ラストで降り注ぐ桜の花びらは、町全体を覆う人々の小さなやさしさの象徴であると感じました。

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(出典元:©2015「きみはいい子」製作委員会)

見て見ぬふり、うまくやり過ごすことに慣れてしまった私たちは、この映画の登場人物たちのように一歩踏み込むことが苦手です。

社会問題として取り上げられる事柄は時代とともに変わりはしますが、根底にあるのは無関心や保身、自己中心的な社会の構造にあるように思えます。

世界を変えたり、全ての人を救ったり、社会全体を一変させるなんてことは誰にもできません。でも、隣に住んでいる人を、道で行きかうあの人を、身近な誰かの声に耳を傾けることは出来るはずです。

それすらもしないで、嘆いていたってなにも変わらない。この映画は、淡々とそれを紡いで、じんわりと伝える、原作をしっかりと読み込んで作られています。

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呉美穂監督作品は非常に評価が高いので、合わせて「そこのみにて光輝く」などもご覧になってください!

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